境界に対する人の想い
境界杭を勝手に動かして、人の土地を奪い取ろうとすることは不法行為です。
しかし今回のコラムでは、その当たり前のことについて語るつもりはありません。
今まで、建築の仕事に携わり、土地境界に関して、また境界立会い等を通して、たくさんの土地所有者の方に会う機会を頂きました。その中で、一筋縄ではいかない頑固な方や、気難しい方、感情的な方、感情を全く出さない方、いろんな方がいました。一筋縄ではいかない隣家の方々から教わったことを思い返し、丁寧に人と人の機微をわきまえ、接するよう心掛けてはいますが・・・・。
境界杭や測量図の話しならまだしも、水路や立木などの地形の話、家族や隣地との過去からの話まで発展することもしばしばです。
不明確になった筆界や所有権界があった際、意外にも境界杭や図面だけではなく、対話の中に生まれる話などからきっかけを発見することもあるように思います。
「土地に対する想い」は人それぞれではありますが、誠実さで対話していくことが大切だと感じます。
その意味や重要性に気付かず、一方的に測量図や現況を信奉し、対話を疎かにしてしまえば解決は難しいはずです。
私たちができることは、その土地に想いを巡らせた人々がいたことを忘れないことです。
どんな地であっても、その土地を開拓し、定住し、管理し続けた人々の苦労を忘れずに、その土地ごとの魅力をいっぱいに感じ取り設計に織り込むことがプロとしての役目だと感じています。